働く側が多くの恩恵を受けているテレワーク。
しかし一方で、国内外でテレワークを減少・廃止する動きも活発になってきているのをご存じでしょうか。
海外ではテスラやGoogleが、国内ではホンダなどが原則オフィス出社に切り替えています。
本記事では、国内外で広がるオフィス出社への回帰と、その要因をお伝えします。

国内外で進む「テレワーク廃止」の動き

テレワーク縮小・廃止を決めた海外企業

海外では、比較的早くから大手企業を中心にテレワークの縮小・廃止が進められています。

例えば、イーロン・マスク氏が創業者兼CEOを務めるアメリカの大手電気自動車企業テスラは、リモート(在宅)勤務は今後容認しないとして、最低週40時間はオフィスに出社しなければならないと社員に通知をしました。

米Googleも2022年4月から週3日以上のオフィス勤務を社員に促し、テレワークの縮小を始めています。また、米Amazonも同様に、少なくとも週3日はオフィスで勤務するべきと発表しています。

加えて、海外の投資銀行大手のゴールドマン・サックスも、基本的に週5日のオフィス勤務を求めています。

このようにGAFAや大手企業を中心に、テレワークを縮小または廃止し、オフィス出社を社員に求める企業が増えてきている現状があります。

国内企業の間でもテレワーク縮小の動きが活発に

実は海外だけでなく、日本国内でもテレワークを縮小したり、廃止する動きが活発化してきています。

例えば、大手自動車メーカーのホンダは、「『三現主義で物事の本質を考え、更なる進化をうみ出すための出社/対面(リアル)を基本にした働き方』にシフトしていきます」と従業員に向けてメール送付を行い、2022年5月下旬よりテレワークを縮小・廃止し、基本的に出社(対面)での業務への転換を決めました。

大手ECサイトを運営する楽天グループもテレワークを縮小し、週4日出社へ変更。また、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初、いち早くテレワーク実施に踏み切ったインターネット事業を展開するGMOインターネットグループも、これまで原則週3日出社・週2日在宅勤務としていたところを、在宅勤務の縮小・廃止し、出社勤務を原則とする方針に変更しました。

都内企業のテレワーク実施率もやや低下

東京都が定期的に実施している、都内企業のテレワーク実施率も緊急事態宣言期間と比較しても、全体的にやや減少傾向にあります。
今年7月の調査結果では、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は45.2%で、6月の前回調査(44.0%)に比べて1.2ポイント増加しています。しかし、令和5年3月までは51.6%でしたが、4月以降は50%を下回っているので、全体的に見るとテレワーク実施率が低下していると言えるでしょう。

以下のグラフからもお分かりいただけるように、その時の感染状況によってやや波はあるものの、テレワーク実施率は右肩下がりの傾向にあります。

(画像出典元:テレワーク実施率調査結果 7月|東京都 (tokyo.lg.jp)

なぜテレワークが縮小傾向にあるのか

このようにテレワークは国内外で縮小・廃止傾向にあることが分かりました。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きつつある今、今後もテレワークは縮小していくでしょう。

縮小の要因は大きく分けて2つあると考えられます。

・テレワークが暫定措置であった点
・コミュニケーションやコスト面で課題が出てきた点

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

要因1:テレワークが暫定措置であった

そもそもテレワークの実施が、当時の暫定的な措置だった点が一つの要因です。

テレワークを実施している多くの企業が、テレワークの目的を「新型コロナウイルスの感染拡大防止」と定めています。

新型コロナウイルスは、「新型インフルエンザ等感染症」として2類の扱いでしたが、2023年5月8日以降は、新型コロナウイルスが5類に引き下げられました。マスク着用や換気実施などの対策は個人に委ねられるようになり、感染対策などが緩和されています。また、新型コロナ陽性者や濃厚接触者の外出自粛が法律に基づいて求められることもなくなりました。

そのため感染拡大が収まりつつある今、テレワークを続ける意義がなく、テレワークを廃止し、出社に戻すという判断は妥当であると考えられます。

要因2:コミュニケーションやコスト面で課題が出てきた

加えて、テレワークを数年実施していく中で、いくつかの課題も浮き彫りになりました。

例えば、オンライン完結のコミュニケーションは困難で業務に支障が出たり、社員のストレス負荷になってしまうことや、一時は通勤手当等の削減でコストが抑えられると考えられていましたが、パソコンなどの備品提供やセキュリティの強化などで出社よりもコストがかかってしまったことなどが挙げられます。

また、長期間テレワークが続くことで社員のモチベーション醸成が難しく、離職を招いてしまったというケースも少なくないようです。

このように、テレワークが長期化することで会社にとってデメリットも浮き彫りになり、感染リスクが減った昨今、在宅勤務を廃止し、テレワークから出社に戻す企業が増えているのです。

まとめ

働く側としては、通勤のストレスから解放されたり、自分の裁量で働き方をコントロールしたりできるテレワークは、非常に有意義なものでした。しかし一方で、企業においては多くの課題や問題が浮き彫りになり、その結果、テレワークと出社両方を取り入れるハイブリッドな働き方や、在宅勤務の廃止、原則5日出社などオフィスへ回帰する動きが活発になりました。

会社のメリットと働く側のメリットの両方を加味した、「これからの働き方」の模索が急がれます。