近年、政府による働き方改革の影響で「ワークライフバランス」という言葉を聞くようになりましたが、実際にどのようなことなのかよく分からないという人もいることでしょう。

こちらの記事では、オフィスから離れてテレワークに勤しむ人向けのワークライフバランスにまつわることについて解説していきましょう。

ワークライフバランスとは?

ワークライフバランスとは、日本語に直訳すれば「仕事と生活の調和および調整」。もう少しかみ砕いて説明をすると 、仕事と生活の両立を叶えることで心身とともに豊かな生活を送り、社会全体の幸福度を向上させることです。

また、内閣府が提示している定義においては、以下のとおりです(※抜粋)
多様な働き方が確保されることによって、個人のライフスタイルやライフサイクルに合わせた働き方の選択が可能となり、性や年齢にかかわらず仕事と生活との調和を図ることができるようになる。男性も育児・介護・家事や地域活動、さらには自己啓発のための時間を確保できるようになり、女性については、仕事と結婚・出産・育児との両立が可能になる。

「労働市場改革専門調査会第一次報告」
(平成19年4月 経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会)

老若男女誰もが、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発など、様々な活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態である。

「ワーク・ライフ・バランス」推進の基本的方向報告」
(平成19年7月 男女共同参画会議 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会)

参考
仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章 – 「仕事と生活の調和」推進サイト – 内閣府男女共同参画局

ワークライフバランスが着目されている背景
ワークライフバランスが着目されている背景(=きっかけ)については、主に次の4つです。いずれも今日の日本の労働環境と紐づいています。

国内の労働人口の減少
少子高齢化に伴い、国内の労働人口が減少している傾向です。この状況だと、ゆくゆくは少ないメンバーでたくさんのタスクを抱えてしまい、長時間労働を強いられてしまいます。そのため、休むべきときに休めないという事態になり悪循環になるかもしれません。

仕事の属人化
仕事のなかにも1時間くらいのレクチャーをすれば対応できる比較的シンプルな仕事もありますが、専門的で、かつ難易度の高い仕事になると「この人がいないと回らない」ということも。このような仕事の属人化が続くと、その担当者が休暇のときに十分に対応できず、生産性がダウンするリスクも高まります。

女性の社会進出
労働人口の減少の影響で、夫婦共働きという世帯が珍しいものではなくなってきました。出産や育休を経て復職する人、子育てが一段落したから再び働くという人も多くなっています。ただ、このような人が家庭と両立して働き続けるには、何かあったら仕事の調整をつけられるなどといった柔軟な職場環境づくりが必須です。

長時間労働と休暇取得
近年の長時間労働による過労死などの問題の影響で、長時間労働について見直しする動きが出ていますが、やはり長時間働かないとタスクが片付かないという層もいます。このような労働が続くと、心身ともに疲弊するリスクが高くなるのは言うまでもありません。

また、2019年4月に労働基準法第39条が改正され、年間で5日の年次有給休暇の取得が各企業の義務となりました(※基本、雇用されて半年以上の従業員が対象)。しかしながら、義務化されても休暇を十分取得できないというのが現実。エクスペディアの「有給休暇の国際比較調査2020」によると、日本の有給休暇の取得日数がドイツなどと比較しても極めて少ない結果が発表されています。以下のグラフでは、コロナ禍になってから取得日数が少なくなっている傾向です。

参照:エクスペディア 世界16地域 有給休暇・国際比較調査 2020発表!コロナ禍で有給休暇の取得が世界的に低下 日本人は世界一のステイホーム率!一方で行きたい旅行先は増加|エクスペディア

参考
年次有給休暇の時季指定|働き方改革特設サイト

テレワークでワークライフバランスが大切な理由

新型コロナウイルス感染拡大により、オフィスからテレワークに完全に切り替えたまたは一部テレワークになったという人もいることでしょう。対面で話せる機会が少ないテレワークでもワークライフバランスを考えることが大切です。その理由は次のとおりとなります。

長時間労働になるリスクが発生する
テレワークだと通勤時間がないのがメリットですが、仕事を切り上げるタイミングがよくわからず長時間仕事にどっぷり浸かるテレワーカーがいる可能性があります。テレワーカーでもこのような労働が続くとオンオフの切り替えができなくなるので、企業側や雇用主でも何らかの線引きをしたり、勤怠管理ツールの運用の徹底を促すなどの対策が必要です。

すぐ対面できないからこそ細やかなアクションとつながりが必要
テレワークの場合、オンラインで仕事仲間と話せても時間的に制限がされていることが多く、物足りなさを感じるかもしれません。相談したくても結局仕事の話のみでオンラインミーティングが終わったということも。だからこそオンラインで話をするときは、仕事だけのネタではなく、近況を確認するなどの雑談を交えるといったアクションが必要です。コミュニケーションが取りやすい雰囲気をつくることで、「次も頑張ろう」という気持ちになるかもしれません。

テレワーカーがワークライフバランスを保つポイント

ワークライフバランスを保つことは、自身の心身の健康につながるだけでなく、組織および社会全体の流れを良くすることにつながります。テレワーカーがワークライフバランスを保つ主なポイントは以下の4点です。

・規律正しい生活をする:仕事のある日は、ほぼ同じ時間帯に起床と就寝をし、3食をきちんととることは、規律正しい生活をするための近道です。

・休むときはしっかり休む:仕事が休みになると進捗状況が気になることがありますが、余計な心配をせず仕事を忘れて休むことも大切です。

・仕事する時間帯を決める:ほぼ1日自宅にいるので、仕事とプライベートの線引きが難しいのがテレワーク。イレギュラーな事態がない限り、仕事する時間帯を概ね決めましょう。

・仕事以外でリフレッシュすることを見つける:仕事がないときに趣味の時間を作ることは息抜きにもなります。コロナ禍で外出や行動が制限されていますが、プライベートで打ち込めることを見つけ、リフレッシュできる環境をつくりましょう。

テレワークでワークライフバランスを保つなら普段の生活を見直そう

今回の記事では、今日の日本の労働事情を交えながら、テレワークでワークライフバランスを保つポイントを中心に解説をしました。テレワークとなると仕事の内容や裁量によって時間の線引きがつかないなどの問題点があり、それが積み重なると心身の負担が生じるのは言うまでもありません。心と身体の健康を保ちながらテレワークに勤しむなら、まずは普段の生活を見直すことが必要です。このような見直しをきちんとすることで、ワークライフバランスを保てるようになるでしょう。