テレワークを導入する企業が増えて働き方の選択肢が増えたことは好ましい一方で、子育て世代にはテレワークであることが不安の種となってしまっているケースがあります。それは「テレワークをしていると、子どもを保育園に預けられないのではないか?」という不安です。

今回は、テレワークと子育ての両立を目指す方へ、理解しておくべきポイントをまとめてご紹介します。

「テレワークなら、自宅で子どもを見ながら自分のペースで働ける」?

コロナ禍において、テレワークが促進されて、在宅でも仕事ができる環境が整えられていった一方で、子育て世代は厳しい状況に直面しました。感染拡大を受けて子どもの保育園や学校が一時閉鎖となったり、在宅で仕事ができる家庭には登園自粛要請が出る自体となったためです。

大きく浮き彫りになったのは、世間のイメージと現実のギャップでした。程度の差こそあれ、登園自粛要請の裏には「テレワークで在宅勤務が可能なら、子どもを見ながら仕事できるよね!」というイメージがありましたが、実際にそうしなければならなくなった家庭からは悲鳴が上がりました…。

子どもの集中力は「“年齢+1”分」と言われることがあります。これに当てはめると、小学6年生でも13分、未就学の5才となるとたったの6分しか集中力が持たないということになります。ようやく遊びに集中してくれたと思いきや、次の瞬間「お母さん、これ見て〜」「お父さん、〇〇はどこ?」と話しかけられて、仕事に集中することはほぼ不可能です。集中力の必要な作業中であろうが、オンライン会議中であろうが、子どもには関係がありません。

もちろん子どもの年齢や性格、兄弟の有無、親の仕事の内容などあらゆる条件が異なりますし、それらが複雑に絡み合っている現実の中で「テレワークだから家で子どもを見てあげられる」というのはかなり無理のある言説ということが明らかになりました。

テレワーカーでも、子どもを保育園に預けられるのか

新型コロナウイルス感染症が5類に移行されたあとも、テレワーカーの子育て世代は不安を抱えています。それは「テレワーカーで在宅勤務だと、子どもを保育園に預けられないのではないか?」という不安です。

結論、親がテレワーカーであることを理由に子どもの保育園への入園を断られることはあってはならないとされています。実際、厚生労働省と総務省が運営するテレワーク総合ポータルサイトでは、以下にような記載があります。

Q. 在宅勤務をしていますが、幼い子どもがおり、保育所等を利用したいです。在宅勤務の場合には、保育所等を利用できないのでしょうか。

A. 在宅勤務している場合であっても保育所等の利用対象となることについては、内閣府・文部科学省・厚生労働省の連名通知により、各市町村等に対して示しています。
 また、居宅内での労働か、居宅外での労働かという点のみをもって優先度に差異を設けることは望ましくなく、個々の保護者の就労状況を十分に把握した上で判断すべきであるということについても、内閣府・厚生労働省の連名事務連絡により各市町村等に対して示しています。
 なお、コロナ禍においては厚生労働省の「保育所等における新型コロナウイルスへの対応にかかるQ&A」で、「テレワークで在宅勤務をしている場合は仕事を休んで家にいるものではない」旨を各市区町村等に対して示しています。

引用:テレワーク総合ポータルサイト|厚生労働省、総務省

このようにはっきりと国の指針が明らかにされているのはありがたいのですが、実際のところ、保育園を運営するのは各自治体であり、全国各地の保育園入園に関する状況詳細を厚労省が管理できている訳ではありません。

待機児童という言葉があるように、地域内に定員を超える児童がいる場合などに保育園入園の優先度を図るため、各自治体でポイント制度などを準備しています。このポイント制度によっては、テレワーク(居宅内での労働)がマイナスに影響する場合も実際にあるようです。

このような状況は、国が容認しているものではないという知識をまず持っておくことに加えて、取り得る対策についてもご紹介します。

テレワーカーが保育園を利用するために理解しておくべきポイント

国としては、テレワーカーであっても保育園の利用対象であることははっきりと示されているのですが、現状、まだ不安が残ります。これから保育園の利用を検討している子育て世代のテレワーカーが知っておくべきポイントをご紹介します。

入園のための書類をしっかり準備する

保育園に入園するためには、親が就労などを理由に自分たちで十分な保育ができないことを証明する必要があるため、「就労証明書」の提出が求められます。

会社に所属しテレワークをしている場合
各自治体で配布している専用のフォーマットを準備し、所属している会社に勤務状況に関する状況を記載してもらいます。この際の就労状況について、時短勤務よりもフルタイム勤務の方が有利となる場合があるため、復職後の勤務形態などについても所属先とよく話し合いの上、記入してもらうのが良いでしょう。

また、共働きの場合それぞれの勤務先の就労証明書が必要ですので、注意してください。

フリーランステレワーカーの場合
会社に所属する場合と同様に、各自治体のフォーマットを利用しますが、フリーランスの場合は自身で記入します。日中の保育が難しい実態であることが伝わるように、漏れなく情報を記入しましょう。

また、就労証明書の他に「開業届」や「前年度分の確定申告書」「青色申告承認申請書」のコピーなどの提出が求められる場合があります。これらの書類は、もし自治体から提出が求められない場合にも、入園のためのポイントに影響する可能性が高く、出来る限り準備することをおすすめします。

認可外保育園やベビーシッターを利用する

保育園入園のポイント制度において、就労のための認可外保育園やベビーシッターの利用実績が加点対象になる場合があります。もし希望する保育園の入園が叶わなかった場合、次の入園時期までは認可外保育園を利用してフルタイム復帰し、再度認可保育園への入園に応募をするという選択肢もあります。

競争率の高い保育園を避ける

競争率の高い保育園においては、どうしても居宅内でのテレワークが不利になってしまう場合があります。保育園の申込の際には、複数の保育園の希望を出すことができますので、過去の競争率や今年の状況などを役所で確認をするなど、時間に余裕を持って子どもを預けたい保育園の候補を精査することをおすすめします。

テレワークで仕事と子育てを両立、よりよい形を実現していくために

コロナ禍において「テレワークだから、自宅で子育てしながら自分のペースで働ける」がかなり無理のある言説であることが明らかになりつつ、テレワーカーが子どもを保育園に預けることにもまだ不安が残る現状があります。

ただし、国としても自宅でのテレワークは保育園利用の歴とした理由になり、それが保育園入園のために不利となってはならないとして各自治体に勧告をしたという事実は、テレワークという働き方の浸透と、仕事と子育ての両立の難しさが社会に周知されつつあることを示していると思います。

確かに、在宅でテレワークができることで、保育園のお迎えのためだけに時短勤務にする必要がなくなったり、家事をしたり子どもと過ごす時間を増やすことができたりと、まだまだ多くのポジティブな可能性があります。

テレワークという新しい働き方によって、仕事と子育てを両立し、より良い社会を築いて行くことができればと思います。