テレワークが推進され、自宅やコワーキングスペース、職場から離れた実家や休暇で訪れた先のホテル、地方にある第二の生活拠点など、働く場所の選択肢が大きく広がりました。

最近では、カラオケやネットカフェ、ワークスペース付きの銭湯や、自然あふれるキャンプ場でのテレワークなど、次々とユニークなテレワーク場所が登場していますが、今回は「移動中」にテレワークできてしまう意外な場所をご紹介します。

変化のきっかけになった、生活に馴染む駅ナカのテレワークブース

様々なテレワーク場所の選択肢が増えていく中でも、筆者にとって衝撃だったのは、駅ナカのテレワークブースでした。

数年前、駅ナカのテレワークブースの試験的導入が始まったと言うニュースを聞いた時は「そこまで時間を切り詰めて、現代人は本当に働き詰めになってしまうのではないか?」と不安を覚えたのですが、それは、自宅やコワーキングスペースという従来的なテレワーク場所に置き換わる場所としての選択肢ではなく、本来テレワークする場所・時間ではなかった余白が、新たにテレワーク場所・時間として提供され始めたという衝撃だった気がします。

そんな駅ナカのテレワークブースも、いまや全国550拠点以上も設置され、すっかり私たちの生活にも馴染んできました。

このように、いまでも増え続ける新しいテレワーク場所ですが、今回は「移動中」の時間を有効活用できてしまう意外なテレワーク場所をご紹介します。

移動中のこんなところで?!意外なテレワーク場所

新幹線のビジネス車両

画像出典:ワーク&スタディ優先車両“TRAIN DESK”|JR東日本

「新幹線でのテレワークなら以前からできたらよね?」と思われた皆さん。もちろん、ただ普通の新幹線の座席でパソコン作業ができることを紹介するわけではありません。

今までも新幹線であれば、まとまった時間が確保でき、バスや電車など他の交通機関に比べて揺れも少なく、個々のテーブルもあり、パソコン作業はある程度はできましたが、難点だったのが音声通話やオンライン会議の参加には制限があること。

新幹線では原則、音声通話などは通路デッキで行うことが求められるので、移動中に参加しなければならない会議があっても、積極的な発言や自らモデレーションなどが必要なものは新幹線内では難しく、時間をずらす必要がありました。

そんなニーズに応えて登場したのが、新幹線のビジネス車両です。各社、少々異なる名称と内容でサービスを展開していますが、共通するのはやはり通話が可能な点。また、ビジネス車両指定席の予約購入は必要であるものの、普通車両の指定席と変わらない値段設定が基本なので、余計なコストはかけず、いつもの移動時間で気兼ねなくオンライン会議を含めたテレワークができるというのは、実は画期的なサービスです。

さらに東海道新幹線では、個室のビジネスブースの試験導入も始まっており、どんどん快適なテレワーク場所が整ってきています。

参考:
S Work|JR東海
ワーク&スタディ優先車両“TRAIN DESK”|JR東日本

オフィス搭載の軽トラ

画像出典:軽トラの荷台がオフィスに 通信環境も完備 ドコモらと妙高市が“雪山ワーケーション車両”の実験|ITmedia

コロナ禍で、キャンピングカーやバンライフといった車上での生活に注目が集まりましたが、持ち運べるオフィスを搭載した軽トラ提供の取り組みを行なった自治体と日本企業がありました。

新潟県妙高市とダイハツ、NTTドコモは2021年、同市でウィンタースポーツを楽しむユーザー向けに、モバイルワークステーションを搭載した軽トラを貸し出すという実証実験を行い、新しい働き方の可能性を検証しました。

また、大分県姫島村でも2022年、「バンケーション」と名付けてワークスペースを搭載した車で仕事をしながら地域を観光してもらうモニターツアー等を企画しました。

キャンピングカーやDIYしたバンで旅をしながら生活そのものを変えるアクションとは違い、テレワーク場所を持ち運ぶという発想は斬新で、今後も新しい移動中のテレワーク場所の一つになっていくかもしれません。

参考:
軽トラの荷台がオフィスに 通信環境も完備 ドコモらと妙高市が“雪山ワーケーション車両”の実験|ITmedia
軽トラ荷台がオフィス?新たな働き方「バン」ケーション 島の観光スポットを移動しながら仕事【大分発】|FNNプライムオンライン

クルーズ船のテレワークスペース

クルーズ船といえば、長期になりますし、陸を離れると携帯の電波も入りにくく、インターネットの接続が難しいのに加えて、日本人にとっては「シニア向けの優雅な旅、贅沢な旅」という印象が強く、テレワークとは結びつかない場所だと思っていました。しかし、ついにテレワーク場所を設けた日本のクルーズ船がデビューするようです。

商船三井クルーズは、24年末に投入するクルーズ船「MITSUI OCEAN FUJI」にテレワークスペースを設置することを発表しました。

日本のクルーズ船の乗客は、諸外国に比べて10歳以上も年齢が高く、各社は新しい顧客層の開拓ために様々な施策を打っているようです。テレワークスペースの設置もその一つ。
また、懸念の一つであったインターネット接続に関しては、衛星インターネットアクセスサービスであるスターリンク (Starlink) を用いて、船上でも高速インターネットが利用できるとのこと。

今まで難しかったクルーズ中のテレワークが可能になれば、長期の休暇が取得できないという現役世代でもクルーズ旅が可能になります。

ワーケーションだけではなく、移動しながら、仕事も休暇も全部同時に取れてしまうとは、仕事や生活リズムにも変化を起こす選択肢の一つとなりそうです。

参考:
商船三井などクルーズ船各社、現役世代に熱視線 船内テレワークも|日経ビジネス電子版
新ブランド「MITSUI OCEAN CRUISES」と船名「MITSUI OCEAN FUJI」を発表
~日本発祥のウェルビーイングを実現~|商船三井

広がり続ける選択肢。あなたはどこでテレワークする?

今回は、移動中にもテレワークできてしまう、意外な場所についてご紹介しました。

常にに働く場所を探しているテレワーカーにとって朗報ですが、これは単にテレワーク場所の選択肢が増えているだけではなく、私たちの生活や生き方にも影響を与える変化と言えます。

いつでもどこでもテレワークができる環境が整いつつあるからこそ、どのような生活や生き方をしたいのかを考えながら、テレワークする場所を選択していきたいですね。