コロナ禍の影響を受けてテレワークという働き方を取り入れた企業は、テレワークを継続するところと、徐々に出社の機会を増やしたり出社を推奨するところがあり、判断が分かれています。

このような判断が下される時には、企業はどのような点を考慮しているのでしょうか。また、今後テレワークという働き方を続けていくべきか迷いがある企業の経営者や担当者は、何を判断軸とすべきでしょうか。

テレワークの利点や課題は、体感として感じているものがあるかもしれませんが、企業としての方針を考える時には、やはりデータとして効果計測を行うことが非常に重要です。とはいえ、どこまで何を測定すればいいのかというのは悩みどころで、実際には効果測定が出来ていないという企業も多いようです。

コロナ禍の働き方改革といった外的な要因により判断するのではなく、あくまでも自社にとって最適な働き方を選択していくためにも必要で有効なテレワークの効果測定について考えてみました。

テレワークの効果は、生産性だけでは測れない?

そもそも生産性とは?

テレワークの効果測定では「生産性」が重要と言われますが、具体的には何を指しているのでしょうか。

生産性とは「生産性=アウトプット÷インプット」という方程式で表すことができます。

分母となるインプットとは、働く人数や時間、設備、原材料など、何らかのアプトプットを生み出すために投入したものの量で、分子となるアウトプットは、投入された人や時間、原材料を元にして生み出された生産量や付加価値額です。

生産性にもいくつかのパターンがありますが、テレワークの効果測定で語られることが多いのは、労働生産性です。例えば、テレワークにより生産性が向上したかどうかを計測したい場合には、以前に比べて少ない労力で、より多くの付加価値を生み出すことができたかどうかについて検証することになります。

テレワークの効果を生産性で測る場合の課題

生産性という指標は非常に重要視され、普段の仕事やニュースなどでも見聞きする機会が多くありますが、テレワークの効果を測ろうとする場合には必ずしも万能な訳ではありません。

まず、会社全体の生産性を計測するだけではなく、部門や個人の生産性も合わせて複合的に判断する必要があります。テレワークの効果測定にとどまらず、平時の会社運営でも複合的な判断は重要なことではあります、例えばテレワークを開始してから会社全体の生産性が向上されていたとしても、一部の部門が他部門を引っ張っていて大きな不均衡が生じてしまっている場合や、テレワークをしている部門よりもむしろテレワークを実施するのが難しく出社機会のある部門の方が生産性を伸ばしているといった可能性があります。

さらにこのような計測結果に対して「テレワークの効果が上がっていない、限定的だ」「一部の部署に偏りがあるのはよくない」と判断するのか、「テレワークを実現したことで、既存の事業ではより高い生産性を実現していて、新規事業ではある程度予想通り」と判断するのかなどは、それぞれの会社の経営理念や方針などによって異なります。

重要なのは、生産性を測るとしても、会社全体の生産性だけではなく、自社の働き方を選択する判断に必要な部門や個人の生産性を合わせて複合的に判断することです。

また、生産性を測ったとしても、それがテレワークが原因であるかどうかを特定することが難しいことが挙げられます。テレワーク前後で比較をしたとしても、コロナ禍における消費動向の変化や、世界情勢を反映した景気、組織体制の変更、従業員個人の体調や能力といったさまざまな要素が生産性に影響しうるからです。

そこで、生産性だけではない、テレワークの効果を測る指標を持っておくことが重要です。

生産性以外に、テレワークの効果測定で考慮した指標とは

生産性以外に、テレワークの効果測定で考慮した指標とは

企業全体だけではなく、部門や個人の生産性を測って総合的に判断することが重要とお伝えしましたが、部門や個人の生産性の中にもさまざまな要素があります。

例えば、「問い合わせ対応した件数と時間」や「顧客への訪問回数・時間と新規契約の獲得数」等を分析していくと、より具体的な傾向を見ることができます。ここまで分解して計測することで、テレワークという要素の影響や効果が判断しやすくなります。

人材の定着率

テレワークの1つの利点として、働く時間や場所に制約がある子育て家庭や、介護や通院が必要な人でも柔軟な働き方ができるとアピールし、人材の流失を防いだり、新たな優秀な人材を確保できる可能性があります。

このような利点を生かすためにテレワークを取り入れているのであれば、人材の定着率は計測したいところです。

顧客満足度

テレワークの効果というと、社内での評価をイメージしがちですが、顧客満足度も重要な指標となります。

労働生産性では、生み出された付加価値、つまり多くの場合は利益額や粗利率に注目することになりますが、顧客へのアンケートを実施したり、満足度を調査することで、将来的に利益に結びつく可能性のある要素や、顧客体験や満足度にテレワークが影響したかどうかを測ることができ、1つの有効な指標となります。

テレワークの効果測定には、会社として「何を大事にするか」が最も重要

テレワークを継続するのか、出社に戻すのか、多くの企業が判断を迫られています。

テレワークの効果を適切に測定するには、生産性だけでは課題が残ります。
大事なのは、自社が「何を大事にしていくのか」を明確にし、複数の指標を用いて測定を行ったうえで、その結果をどう捉えて判断するかです。

生産性だけではなく、複数の指標を用いて、自社にとって最適な働き方を考えてみてはいかがでしょうか?