1on1(ワンオンワン)という言葉を聞いたことがありますか?

もともと、IT企業やスタートアップが集まるアメリカのシリコンバレーにおいて、有効なマネジメント手法として広がり、日本でも数年ほど前から取り入れる企業が増えてきました。しかし、初めて導入する際にはスムーズにいかないことも多々あるようです。

テレワークの普及により、フルリモートでの勤務、テレワークと出社のハイブリットな働き方など、組織におけるマネジメントはより難易度が上がってきています。このような時代背景から、1on1の効果に期待が寄せられています。

1on1とはどのようなものなのか、1on1の始め方と合わせてご紹介します。

テレワークでも有効な、1on1とは

1on1とは、一緒に働く組織やチームにおいて、上司と部下が1対1で定期的に行う対話の場です。頻度としては週1回や少なくとも月1回などで、1回あたりの所要時間は15分〜30分程度の場合が多いようです。

1対1となると、面談のような形式張ったものというイメージがあるかもしれませんが、1on1は、人事評価などを行う面談や、特定の業務の進捗確認や議論を行う会議とは異なります。

では、どのような目的で行われるのでしょうか?

1on1を実施する目的

1on1は、マネジメント手法の一つです。その目的は、上司が部下に対する理解を深め、ときに部下が自身に対する気付きを得て、信頼関係を築き、部下の成長をサポートすることです。

これは、直接的に組織の成長や課題の解決には繋がらないように思われるかもしれません。しかし実は、目の前の「課題」ではなく、組織の中で働く「人」に注目して個別の対応をすることにより、それぞれのパフォーマンスやモチベーションが上がったり、将来的な問題の芽をいち早く見つけて対処できることから、結果として組織全体の成果にも良い影響を与えると言われています。

テレワークの機会が増え、部下やチームメンバーと別々の場所で働くことが当たり前になってきた昨今では、お互いに普段の様子や些細な変化などが掴みにくくなっています。出社して同じ場所で働いていたときには何気なく知り得た情報も、1on1といった機会をあえてつくり、継続していくことがより重要になっています。

1on1の進め方

初回の1on1の進め方

1. 1on1を実施する目的を説明する

1on1を初めて実施する際は、しっかり1on1を実施する目的を共有できるよう準備しておきましょう。目的がうまく伝わらず曖昧なまま進めてしまうと、部下としては「上司に言われたから参加している」「新しい仕事が増えた」など受動的になったりネガティブに受け取り、本来の目的を叶えることが難しくなってしまう可能性があります。

具体的には、なぜ1on1を実施するに至ったのか、どんな思いがあるのかなどを話していき、それを受けた部下の感想や思いなどを聞いてみる時間にすると良いでしょう。

比較的早く自己開示してくれそうだったり、まだまだ表面的な話しかできていない、受け身の反応だったな、意外と自分の話をしたいと思ってくれていたんだ、など、1on1はそれぞれで対話のあり方が違うことが、難しさでもあり、面白さでもあります。業務を通した話題ではなく、その人に注目した話題を話し始めたときに、いままでとは違う視点が見えてくるかもしれません。

2. スケジュールを決める

1on1は定期開催するので、初回に今後のスケジュールを決めてしまうとよいでしょう。例えば「毎週○曜日の○時〜○時半」と決め、基本的には他の業務よりも優先して時間を確保するようにします。

緊急対応などやむを得ない場合は変更することもありますが、頻繁に変更するのは1on1の優先度を下げてしまいますので好ましくありません。月曜日は、振替休日になる可能性もあり、避けると無難です。

2回目以降の1on1の進め方

1. チェックインから始める

普段からチェックインは取り入れられていますか?

チェックインとは、「会議のはじまりに、参加者全員に一言ずつ発言してもらう」ことを言い、いわば会議に参加するための準備体操のようなものです。いまの気持ちや気になっていることなどを簡単にシェアしていくことで、会議中に発言しやすくなったり、フォローもしやすくすることができます。

詳細は、こちらの記事もご覧ください
オンライン会議でこそ試したい「チェックイン」とは?

1対1の場でも、チェックインは有効です。1on1は業務の合間に行うので、仕事のことで頭がいっぱいであったり、緊張状態のままでは、なかなかリラックスして対話することができません。まずはチェックインで、いま頭で考えていることや気持ちなど素直に共有することで、頭にスペースが生まれて、目の前の時間に集中しやすくなります。

とはいえ、部下は「気持ちをシェアして」と言われても最初は戸惑うかもしれないので、慣れてくるまでは上司からチェックインを始めることをおすすめします。チェックインは、良いことばかりをいう必要はありませんので、「実はちょっと疲れ気味」「今朝ツイテナイことがあった」など話してみると、部下も「こういう話題でもいいんだ」と思ってもらえますし、自身もリラックスして臨むことができます。

2. おおまかなテーマを決めて、対話する

1on1のあり方に、決まった正解の形はありません。1on1で扱うテーマも、上司や部下の性格や関心、相性、状況や環境要因などによって変化したり、抽象度が変わることもあります。

慣れないうちは、あらかじめおおまかなテーマを決めておき、話し始めてみるとよいでしょう。「今日は〇〇について話したいと思っていたんだけど、どうかな?」という具合です。

テーマ例
・最近の出来事
・最近、困ったこと
・習慣にしていること
・人生やキャリアで大切にしていること
・理想の働き方
・なぜこの会社に入ったのか

もし部下がある程度自発的な参加が期待できるならば、いくつかのテーマから部下に選んでもらったり、自由にテーマを提示してもらっても構いません。

また、直前のチェックインで気になったところや、そこから派生したテーマを選択するのも、本人の関心に近いところなので、大切な気付きに繋がる可能性が高く、おすすめです。

3. チェックアウトで終える

チェックアウトとは、チェックインと同じように参加者に発言してもらうことです。「今はどんな気持ち?」「何か気づきや予想外のことはあった?」など問いかけてみましょう。チェックインとセットで行うことで、自分の感情や心境の変化に気が付いたり、次回までに意識したいことなどを確認することができます。

テレワークでのマネジメントに、1on1を取り入れてみよう

今回は、テレワークにおいても有効な1on1について、具体的な始め方も合わせてご紹介しました。

1on1のような対話に慣れていない最初のうちは、上手くいっているのか実感を持つことが難しいかもしれません。1on1は、たった15分ほどで大きな気付きが得られる場合もありますが、時間をかけることで成長に繋がることもあります。

成果を急いで、アドバイスをしすぎてしまったり、相手の話を遮ったりしてしまうと、効果を得ることが難しくなってしまいます。急がば回れで、焦らず、じっくりと話を聴くことをぜひ意識してみてください。