労働災害(以下、労災)とは、従業員が通勤する途中や業務を行っている時間帯に業務が要因で病気になったり、怪我したりする際に、企業側が補償責任を取ることです。自宅をメインとして働くテレワーク中でも労災として扱われる事例があるのをご存じでしょうか。

こちらの記事では、テレワーク中の労災にまつわることを紹介していきましょう。

働く人なら知っておきたい、労災って一体どんなこと?

労災とは、「労働災害」の略称です。従業員が通勤時間を含む労働時間内にケガをしたり、災害や怪我に見舞われたときに、それを企業側が怪我や疫病、災害に対して補償する制度です。そして、労災は「業務災害」と「通勤災害」の2つの種類があり、それぞれの災害には認定基準を定めています。

業務災害
業務災害とは、従業員が企業側の事業主や責任者(上長)から与えられた業務を行っている時間(=勤務時間)内で、業務を理由とした病気や負傷をしたケースの災害です。就業中に台風や地震の影響で怪我したという事例も業務災害として含まれます。業務災害の主な事例については以下のとおりです。

事例1:勤務時間中にオフィスでデスクのレイアウトを変える作業があり、その作業でぎっくり腰などの身体の負傷が生じた
事例2:就業時間中に上長から身体的および精神的な攻撃、いわゆるパワハラでうつになった(※診断書などの証明書の提示が必要)
事例3:出張および外出先で仕事しているときに、出先の施設で事故に見舞われて怪我をした、病気になった(※私的行為で起きた事故は業務災害にならない場合もあり)

このように業務災害は、原則として、オフィスといった事業所の敷地内で、かつ企業側の指示や管理下の範囲であれば業務災害として扱われます。ただし、休憩時間および終業時間前後に発生した事故のうち、オフィスの施設や設備など原因であれば業務災害となりますが、業務とは明らかに異なる私的な行為なら業務災害の範囲外です。

通勤災害
通勤災害とは、自宅から職場間の通勤途中や帰宅途中で傷病を負ったケースのことです。通勤災害の主な事例については以下のとおりです。

事例1:職場間の通勤途中または帰宅途中で駅の階段から落ちた、または自転車や車で通勤したら事故に遭った
事例2:通勤途中の電車で気持ち悪くなった
事例3:事業主または上長の指示で通勤途中や帰宅途中に銀行や役所などへ立ち寄って、道中に何らかの事故に見舞われた、気持ち悪くなった
事例4:社外研修へ通うまたは帰宅する途中で事故に遭った、または気持ち悪くなった

通勤災害でよく混同しがちなのが、帰宅途中にレストランやスポーツジムなどといった私的な都合で立ち寄って何らかの事故などに遭ったケースです。こちらに関しては、基本的に通勤災害の範囲外となります。

実は労災扱いだった!テレワーク中で労災対象となる事例

前の章ではオフィスワークを前提とした労災について述べましたが、オフィス勤務と比べて行動範囲が狭いテレワークではどのような事例が労災認定となるのでしょうか。

事例1:業務に関連した外出の際に怪我をした、事故に遭った
テレワーカーのなかには、業務に必要な資料のコピーや配送物を送るのに外出することもあるかもしれません。徒歩または乗り物を使ってコンビニや郵便局などの生き帰りの途中で怪我をしたり、事故に遭ったという場合は業務災害の認定となります。業務で必要なときの外出する場合、労災認定になるかならないかはそのときのレシートや領収書が決め手となる場合もあるので、業務に関連したレシート類はかならずストックしたり、写メで撮影しておくとよいでしょう。宅配物に関しては配送先の控えを処分せず、取っておきます。

事例2:テレワーク中に天災に遭い、被災した
テレワーク中に地震などの天災に遭い、自宅および自宅周辺の倒壊などで作業が困難となり、危険を伴う場合、基本的に業務災害になります。ただし、業務災害の認定には、被災した様子などをスマートフォンで撮影し、日付を入れた情報が必要になるかもしれません。証拠になるものを準備しておく必要性があります。

事例3:テレワーク中に仕事のメンバーからパワハラを受けた
働く場が異なってもテレワーク中に上長などから暴言があった、無理難題な仕事を押し付けられた、意図的に仕事を干されたなどの行為は、パワハラです。このパワハラによってうつになって療養が必要な場合、上長などの仕事のメンバーのやりとりを記録しておきます。チャットならそのやりとりをスクリーンショットでストックしておく、電話なら音声を録音するという手段を取ると、労災として認定されるかもしれません。

事例4:トイレに行くために一旦席を離れ、作業する場所に戻る途中で怪我をした
「トイレに行く」という行為は業務外の範囲ではあるものの、生理的行為の扱いとなりますので、労災認定に伴う行為として取り扱われています。トイレから作業部屋で戻るときに家の階段から落ちた、椅子に座ろうしようとしたときに転倒したケースが労災認定となるかもしれませんが、怪我した時間を覚えていないと認定外となるかもしれません。

これも知っておきたい、テレワークの労災認定の問題点と対策
テレワークはオンラインで仕事するメンバーとつながっているものの、実際にどのような様子で仕事しているかどうか把握しづらいものです。特に業務中と私的の切り分けの判断が難しいともいわれており、それが問題点として挙げられています。

たとえば、子どもの送迎や通院のついでに業務に必要な郵送物も出すのに郵便局へ行って事故に遭ったという場合、事故の状況にもよりますが、労災として認定するかしないかについては難しいかもしれません。また、業務時間内が忙しく、仕事に必要な備品の買い出しを業務が終わった後にお店に行き、そこで事故に遭ったという場合もすぐには労災として認定に至らないかもしれません。

後でトラブルにならないためにも、チーム内でGoogleカレンダーなどのオンラインのカレンダーツールに就業時間および場所や外出先など必要事項を共有する習慣をつけましょう。

トラブルを避けるには組織内で労災認定のガイドラインを明確にしておこう

今回はテレワーカー向けの労災認定をメインに紹介しました。
テレワーカーは、業務中に何らかの事故や怪我に見舞われたら、被害にあった日付と時間をメモし、証拠となるものを写メで撮影することを意識しましょう。そしてレシートや領収書に関しては、日付と時間が入っているので、ストックすることをおすすめします。チームの仕事の状況についてオンラインのカレンダーツールで共有すると、労災に見舞われたときに対応しやすくなります。

トラブルを極力避けるためにも組織内でメンバーの状況をチェックしましょう。前でも述べているとおり、テレワーク中の労災認定のガイドラインは、あいまいな点が残っているのが現実です。組織内のトラブルを抑えるためにも、テレワーカーがいるなら「テレワークで○○するときは、労災で対応する」などを明確にしておくのがベストです。