近年、ニュースでよく耳にする「ハラスメント」系の記事は、仕事や学校でのトラブルとして取り上げられており、社会問題として扱われています。そして、対面ではないものの、コロナ禍のテレワーク上のハラスメント、いわゆる「リモートハラスメント(リモハラ)」というものが存在するのをご存じでしょうか?

本記事では、テレワーク中で知っておきたい、リモートハラスメントについて紹介をしていきましょう。

仕事上の「ハラスメント」とはどんなこと?

「ハラスメント」とは、英語の「Harassment」であり、直訳すると「嫌がらせ」という意味です。記事やニュースなどでは「パワハラ(正式名称:パワーハラスメント)」「モラハラ(正式名称:モラルハラスメント)」などといった「○○ハラ」として表されています。

仕事におけるハラスメントは、「パワハラ」として表記され、厚生労働省のホームページでもパワハラに関する定義として掲載されています。優位な立場を利用して身体的な攻撃(暴力など)、脅迫など精神的な攻撃、無視する(または他のスタッフ対し特定の人物に向けて無視を指示する行為も含まれる)をするといった行為を指しています。他にも仕事を妨害する、無理な仕事をわざと依頼する、仕事を減らす、私的なことに干渉することも、パワハラとして含まれています。
(※ただし、仕事のスキルが極めて低いといった理由で仕事量を減らすのは、ハラスメントに含まれない場合もあります)

参考
雇用・労働職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

労働者の心理的および身体的安全を守るべく、2020年6月に「パワーハラスメント防止措置法」が施行しました(※中小企業は2022年4月より義務化の予定)。日本でも法律が定められているので、働く人たちはこの法律について頭に入れながら、仕事を進めるよう促されています。

参考
2020年(令和2年)6月1日より、職場における ハラスメント防止対策が強化されました!|厚生労働省

テレワークのハラスメント(リモートハラスメント)の事例について

先にも述べたとおり、ハラスメントの法律は存在しているものの、対面でないテレワークでもハラスメント、いわゆるリモートハラスメント(略称:リモハラ、以下略称で表記)は存在しています。この章では事例について触れていきましょう。

事例1:Webカメラを常時オンにさせて、Web会議とチャットを多くして監視したがる

テレワークにおいて仕事の進捗状況を確認するためのコミュニケーションは、必要不可欠です。とはいえ、通常業務ができなくなるレベルまで会議やチャットするというケースは、依頼された側にとっては精神的にも負担となり、生産性も上がりません。また、Webカメラを常時オンさせるように指示した場合は、「監視したい」という意図が含まれているので、要注意です。

また、上長が個別のミーティングをやたらとしたがるケースも、「監視したい」というニュアンスが含まれているのかもしれません。仕事仲間でそのような人がいる場合なら、状況を観察しながら専門家へ相談することも視野に入れましょう。

事例2:テレワーク環境やプライベートのことで干渉される

テレワークで気になることの一つが、相手がどのような環境で仕事に取り組んでいるかということです。なかには、やんちゃな子どもがいる、ペットがいる……というケースも珍しくありません。「犬がうるさいね……」「○○さんの子は元気過ぎるね……」「家の周りの工事の音が大きい……」などといった他の家の事情を発言することもリモハラになる場合があります。悪気がなく冗談半分で発言しても、相手次第でリモハラとして訴えられる可能性もあります。

事例3:オンライン飲み会やランチの参加を強要する

コロナ禍で仕事仲間とお店で飲めない、ランチする回数が激減しているので、オンライン上の飲み会やランチは、貴重なコミュニケーションの時間です。

とはいえ、業務時間外の飲み会やランチを強要するのは、相手にとって負担になることもあります。特に介護や育児を両立しながらテレワークに取り組んでいる人にとっては、そのような会の参加を強要されるのは抵抗を感じるかもしれません。主催者側は、招待したメンバーの事情を把握し、「都合が良かったら参加お願いします」というスタンスで対応しましょう。

事例4:チャットを無視する

テレワークで仕事の連絡をとる手段として役立つのがチャットです。チャットは、テレワークにおいてコミュニケーションをとるために必要不可欠なツールと言っても過言ではありません。
テレワークの作業が忙しいと、チャットの連絡が遅くなりがちです。チャットの連絡が来ないと、無視されたと思われる方もいるでしょう。リモートハラスメントにならないよう、チャットが届いたら「〇時間後に対応します」など一言返信をするようにしてください。

事例5:部屋の中を見せるように強要される(セクハラ)

テレワークは、オンラインコミュニケーションがメインとなり、人との距離感が掴みにくい傾向にあります。そのため、関係性が深くなったと勘違いし、部屋の中を見せるように強要されるケースもあります。
生活感を見せないようにしたり、拒否したりするのもセクハラの対策になりますが、セクハラの加害者側に態度を改めてもらいたいものです。他の人も被害に遭っている可能性もあるので、会社側に相談して対応してもらうようにしましょう。

リモハラにならないための必要な対策とは?

テレワーク中にリモハラにならない必要な対策については次のとおりです。

対策1:発言には気をつける

今の時代、デバイスがあれば相手とのやり取りが手軽に録音や録画ができるので、もしかしたら、自分の音声や画像が見えない場所で録音録画されている恐れもあります。だからこそ、テレワークでも、相手のことを考えて不快な印象を与えないよう発言しましょう。

チャットについても攻撃的な発言については、スクリーンショットとして保存され、拡散されることもあります。仕事での立場が指示する側でも、指示される側でも、発言や行動には気をつけて仕事に取り組みましょう。

対策2:Web会議やチャットのルールを共有および周知しておく

リモハラにつながる理由として挙げられるのが、Web会議やチャットのルールがあいまいになっていること。

例えば、チームの会議なら「毎週月曜の14時から1時間」、チャットなら「チーム全体のチャットなら特定の人を攻撃しない」などのルールを明確にしておきましょう。もし、やり取りがリモハラになるかも……と思った場合でも、ルールがあることでリモハラを未然に防げます。

もしテレワーク中のWeb会議やチャットのルールを知らないという場合なら、管理者にそれを確認することをおすすめします。

リモハラなしで仕事に取り組むには相手のことを考えよう

テレワークで、一緒に仕事をする相手の事情を無視し、自分の考えを押しつけることになると「リモハラ」になる場合があります。そうなるとリモートで良い関係性を維持することは困難といえるでしょう。

リモートハラスメントを未然に防ぐためにも、一緒に仕事に関わるメンバーのことを考えることが必要です。このような取り組みは、テレワークが円滑になるだけでなく、良い関係性が育まれるでしょう。そしてひいては、仕事でも成果を上げることができるようになるはずです。