新型コロナウイルスの世界的流行で、急速に広まったテレワークですが、同時に「サイレントうつ」という言葉に注目が集まりつつあります。通勤がなくなったことによる心身の負担の減少や、家族とのコミュニケーションの増加など、テレワークの恩恵を受けているはずなのに、なぜ「うつ状態」になってしまうのでしょうか。「サイレントうつ」の原因や対策をお伝えします。

サイレントうつとは?

テレワークが普及することで、心身の負担の軽減や家族とのコミュニケーションや余暇時間の増加など、多くのメリットを実感している方も多いでしょう。しかし、それと同時にテレワークだからこその「不調」が現れ始めた人も少なくないようです。

その不調の中の一つが「サイレントうつ」です。サイレントうつとは、医学的な病名ではなく、一般用語としてこのコロナ禍に使われ始めた用語です。つまり、明確な定義はありません。出社をしないため、会社から気づいてもらえないという「会社からのサイレント」や、自分自身が不調に気づけない「自分からのサイレント」が背景にあり、こう呼ばれています。

サイレントうつの症状は、通常のうつ状態と大きな違いはないと言われています。やる気が出ない、落ち込む、憂鬱になるなどの心の症状や、眠れない、食欲不振、耳鳴りなどの体の不調がよく見られる症状です。それ以外にも、タバコや飲酒が増えるなど、行動にも不調が現れる場合もあります。「急なニューノーマルに心身がついていけない」「メンバーとのコミュニケーションが不足し、孤独感を感じる」「テレワークで逆に就労時間が増えた」など、さまざまなストレスが積み重なることでこうした不調が起こりやすくなり、気づかないうちに「サイレントうつ」状態になってしまうのです。

サイレントうつになりやすい人の特徴とは

テレワークでサイレントうつになりやすい人の特徴は、「真面目に業務に取り組む人」だと言われています。テレワークは、自分の裁量で仕事ができる、つまり、いつまでも「仕事を続けられる」環境です。出社していれば、通勤によってオンオフの切り替えができますが、テレワークではそれが難しい。そのため、知らず知らずのうちに心身が疲弊し、サイレントうつ状態に陥ってしまうのです。

では、サイレントうつを予防するために、どのようなことに気をつけていけば良いのでしょうか。会社と個人、それぞれができる予防策について見ていきましょう。

会社ができる予防策

先ほども述べたように、社員がうつ状態になっていても、テレワークで出社していない影響で会社もその状況に気づくことができません。ですから、会社としては「うつ状態をあらかじめ防ぐ」「うつ状態に気づく」「うつ状態をフォローする」という仕組みを構築することが重要です。

うつ状態を防ぐ、つまりストレスを溜めさせない仕組みとして、たとえば社員同士の雑談ができるようなコミュニケーションツールの導入や、モチベーションを可視化するためのツールを提供するなどが挙げられます。チームや部署単位で朝会など、みんなで話す時間を作るのもいいでしょう。
次にうつ状態に気づく施策として、チームごとに1on1を取り入れる、相談窓口を作るなどの制度を取り入れてみましょう。なるべくクローズな場を構築してください。
うつ状態をフォローする施策としては、うつ状態や体調の不調を訴える社員をケアする制度を構築することがまず第1歩です。心身ともに健やかに長く働いてもらうためには、しっかりと社員をケアすることが重要です。

個人ができる予防策

テレワークによるサイレントうつを予防するために、個人でできることもたくさんあります。会社で制度が整っていない場合は、まずは個人でできる予防から始めてみましょう。

1)仕事とプライベートはしっかり分ける

テレワークは通勤時間がない分、起きてすぐに業務が始められるというメリットがありますが、これが仕事ととプライベートの境界線をなくす一つの原因です。たとえば、「パジャマのまま仕事をしない」「定期的に休憩時間を取り入れる」「業務終了後は仕事用のパソコンを開かない」など、意識的にオンオフの切り替えを行なってください。業務時間以外は、業務上の通知を切ってしまうのも一つの手ですね。

2)自分のTODOをまとめてメンバーや上司に公開しておく

自分の本来の業務時間以上の仕事を受けてしまうというのも、テレワークの弊害の一つです。これを防ぐために、自分の今のTODO(タスク)を見える化し、メンバーに共有をしておくと良いでしょう。そうすることで、現実的なキャパシティーがわかるので、適切な業務時間に適切な業務量を行うことができるなど、調整をすることができるようになります。

3)相談先リストを作っておく

対策を講じていても、全く心身に不調が出ないとは限りません。少しでも「あれ?」と思う症状が出てきたら、すぐに相談ができるよう相談先リストを用意しておきましょう。たとえば、信頼できる上司や会社の相談窓口の連絡先や、かかりつけ医などです。一人で抱え込まないことが非常に重要ですので、何か困ったことがあればすぐに相談しましょう。

テレワークという働き方は、通勤時間もなく自由に働くことができる反面、無理をしようと思えば無理ができてしまう環境になりやすいです。メリハリをしっかりとつけ、長く楽しく働けるテレワーク環境作りを心がけていきましょう。