コロナ禍でテレワークを行う企業が増える一方、テレワークがうまくいっていない企業や、導入が進んでいない企業もあることでしょう。ここでは厚生労働省の「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」受賞の飲食系製造業企業のなかから、気になる導入事例をご紹介します。ぜひ自社のテレワーク導入時に役立ててください。

味の素株式会社の事例

調味料やクノールシリーズなどでお馴染みの味の素株式会社。同社は「どこでもオフィス」というネーミングで、サテライトオフィスをはじめ、セキュリティが確保された空間でのテレワークを制度を導入しています。経営会議をサテライトオフィスで実施するなど、トップ自ら「どこでもオフィス」を率先することで、テレワークの促進を図っています。詳しい特徴をお伝えします。

対象者は全社員※

テレワークの対象者は、全社員(※試用期間中および新卒採用で勤続1年未満の社員を除く)です。介護や育児などの事由がなくても、制度を利用できます。定年退職後のシニア社員や障がいを持つ社員もテレワークを推奨し、さまざまな人材が活躍できる土壌を整えています。

部署をまたいだ、人材からなる「働き方改革事務局」を設置

テレワークをすすめるためには、各部署との連携が必要です。同社では、部署の垣根を越えて作られた「働き方改革事務局」や「改革拡大事務局」を設け、働き方改革の一角としてテレワークの推進を行っています。横断的に人材を集めることで、取り組みが迅速に進められるだけではなく、思わぬ知見が得られる可能性もあります。

全社員にカメラ付きパソコンとスマートフォンを貸与

社員のなかには、自宅にパソコンがなくテレワークが実施できない場合もあります。同社では、全社員にカメラ付きパソコンとスマートフォンを貸与し、導入の妨げを排除しています。

全国約140拠点のオフィスを利用可能

全社員にパソコンアが貸与されても、自宅で仕事ができない状況の人もいるでしょう。そのためサテライトオフィス会社と契約し、全国約140拠点のオフィスを利用可能に。さらに事業所内にサテライトオフィススペース(全国11拠点)、東京と大阪の2拠点の社宅にテレワークをできる環境を作っています。

自分の働き方で勤務しやすい勤務時間設定

テレワークは週4日まで行え、終日だけではなく30分単位で利用できます。フレックスタイム制(コアタイムなし)や時間単位年休との併用が可能です。

労働時間の工夫

労務管理には勤怠管理システムを活用。同システムに、社員のネットワーク接続時刻(仮想私設通信網(VPN)の接続履歴)を表示することで労働時間を「見える化」し、過重労働防止に役立てています。
所定外労働時間と休日労働時間が社内規定より多い場合は、産業医または保健師による面談なども行い、社員が快適に働ける環境作りを行っています。

カルビー株式会社の事例

ロングセラー菓子などを数多く製造するカルビー株式会社。テレワークの日数に上限をもうけず、自宅以外での勤務も可能となっています。同社も味の素株式会社と同様、トップや管理職がテレワーク導入に率先して取り組んでいます。

労務管理の決めごと

テレワークを行う場合は、前日までに上司にその旨をと業務内容をあらかじめ連絡。終了後は翌日までにアウトプットを報告することが決められています。

モバイルワーク手当を申請

テレワークの業務をするために必要な整備を社員が行いやすくするため、「モバイルワーク手当」を、2020年7月より新設。通勤定期代の支給を撤廃し、出社日数に基づいた交通費を支給しています。

単身赴任の見直し

テレワークで支障がないと判断された従業員に対しては、単身赴任の解除も行っています。テレワークを導入することで、単身赴任の削減にも効果があることが分かります。

サッポロビール株式会社

自宅はもちろんカフェやモバイルワークも可能な、テレワークを導入している、サッポロビール株式会社。テレワークが可能な条件は、所属長の了承を得た社員で勤務歴2年目以上の人。利用回数に制限はないため、利用しやすい仕組みとなっています。

パソコンを全員に貸与

テレワークを推進するにあたり、同社では全スタッフにノートパソコンを貸与。USBスティック型データ通信端末がほぼ全員に貸し出されています。

社内イントラネットに「働き方改革」コーナーを用意

業務内容によっては「自分の仕事はテレワーク向きではない」と考えてしまっている人もいるでしょう。同社では、そのような意識を払拭するため、テレワークを上手に活用している人の事例を定期的に社内発信しています。
製造業ではテレワークは浸透しにくいと思われがちですが、テレワークが利用可能な業務もあるため、そのような事例を紹介し、テレワークの浸透に役立てているのです。

スーパーフレックスとの組み合わせで、より働きやすく

同社はコアタイムのないスーパーフレックスとテレワーク勤務を併用することで、介護や子育てのしやすい環境となっています。

実際にテレワークをしている人の声が「鍵」

トップ自らテレワークを行ったり、上手にテレワークを活用しているスタッフについての情報を共有したりするなど、社内のテレワーク情報の共有をすることで、テレワークへの理解が深まっていくようです。テレワークを導入したものの、うまく活用できていないと感じる場合は、社員インタビューなどを行い、情報共有をしてみるのも良さそうです。