コロナ禍でテレワークを行う企業が増える一方、テレワークがうまくいっていない企業や、導入が進んでいない企業もあることでしょう。ここでは厚生労働省の「令和2年 テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」受賞企業のテレワーク導入事例のなかから気になる事例をご紹介。ぜひ自社のテレワーク導入時に役立ててください。

令和2年「優勝賞」住友商事株式会社の事例

「在宅勤務」「サテライトオフィス勤務(2社と契約、200拠点利用可能)※」「モバイルワーク※」の3つの働く場所を選べる住友商事株式会社のテレワーク。病気や介護、育児などの事由のみではなく、会社が認めれば誰も(※2)が利用が可能です。
2019年9月に従業員に実施したアンケート結果によると、「個人の生産性が向上・維持」(93%)、「働きやすさが向上・維持」(98%)、「残業時間の削減」(11時間32分→5時間25分で▲53%)という結果に。全体的に働きやすさを感じているようです。
そのような住友商事株式会社のテレワークの特徴をピックアップしました。
※1新型コロナウイルス感染拡大防止のため、サテライトオフィスやモバイルワークを禁止しています。
※2通常、同社は新人や派遣社員のテレワークは対象外ですが、新型コロナウイルス感染拡大防止策として現在は対象となっています。

導入時はIT講習会を計89回実施

テレワーク導入するためには、社員一人ひとりのITリテラシーの向上が必要です。住友商事株式会社では、階層ごとに分けてIT講習会を実施し、社員のITリテラシーを高めています。延べ1115人が参加し、受講者のレベルに合わせたIT講習会を実施しています。

経営層自ら、テレワークを体験し発信

テレワークを利用する社員や経営層への動画インタビューを行い、継続的に従業員の生の声を伝え、テレワークの理解促進を図っています。さらに会長や社長自らテレワークを体験するさまを社内向けに発信し、テレワークをより快適にする工夫などの情報を届けています。

スケジュールを共有

テレワークを実施する場合は、上司と相談のうえでその予定を社内のスケジュールソフトに登録し、社内で活用。業務開始時と終了時には、チャットなどで上司に連絡します。パソコンのログオン・オフ時間と勤務時間票システムを連動させることで、働き過ぎの防止にもつながっています。

テレワーク時は、チャットツール(Lync)にサインインすることで、「働いている様子の見える化」を徹底。従業員同士の働きやすさを大切にしています。

労働時間の工夫

育児や通院などで中抜けしやすいように、コアタイムなしのスーパーフレックス制度を導入。フレキシブルタイム外(22:00〜5:00)のテレワーク勤務を禁止しています。

令和2年「特別奨励賞」シックス・アパート株式会社の事例

シックス・アパート株式会社は、CMSプラットフォームやその関連製品・サービスを開発している企業です。アメリカで創業したシックス・アパートの日本法人でしたが、従業員による企業買収(EBO=Employee Buy-Out)により独立。その際に、働き方改革を行い、必要なときだけ出社するワークスタイルを導入しました。独立後に移転したオフィスは、契約社員を含めた従業員が約50名いる企業ながら、総務チーム2席、フリーアドレス10席のみというコンパクトなオフィスに移転する徹底ぶりです(緊急事態宣言下の期間は活用不可)。
SAWS(サウス。Six Apart らしい Working Style)と名付けられた、社員への信頼をベースとしたシンプルなルールを制定。終日および部分的な在宅勤務を採用し、「モバイル勤務」「サテライトオフィス勤務」「ワ―ケーション」に対応しています。
そんなシックス・アパート株式会社のテレワークの特徴をまとめました。

定期代支給のかわりに、テレワーク手当

テレワークに切り替わったことで、定期代の支給はなくなりました。そのかわりにテレワーク代(15000円)を支給。使い道の制限はなく、テレワークをするためのカフェ代として使ったり、ビジネスチェアの購入に使ったりと自由に使えます。もちろん会社に出勤する必要のある場合などには、交通費が支給されます。

労務管理も個人への信頼がベース

出勤簿にはスマホからも書き込める、クラウドサービスを利用。勤務時間は自己申告で報告しているそうです。勤務開始・終了時間、中抜けなどが調整しやすく、子育てや通院が必要な人でもキャリアの断絶のない環境を実現しています。
従業員の中には、離れて暮らす両親の入退院ケアのために、月の半分ほど両親のいる地域で過ごし、テレワークを行った事例もあるそうです。プライベートにも配慮したワークスタイルが実践できるため、高齢化社会において見習うべき働き方といえるでしょう。

全社員がテレワーカーなため、人事評価の基準は共通

必要時にしか出社しないスタイルであるため、人事評価基準に偏りはありません。とはいえ、テレワークでの人事評価は、通常業務のみでは難しいため、チームごとに毎週業務内容の報告を行うと共に、個人の目標を設定しています。個人目標は上司と共有し、その進捗報告を年1回以上、上司と話すことで、個人の成果に合わせた評価をしやすい環境を作っています。

情報通信環境のルール策定や環境

私物のスマホやPCで仕事をする際のルール策定や 緊急時の対応マニュアルおよび窓口の用意など、従業員が安心して働きやすい環境を作っています。さらにVPN環境などの整備、定期的な会社PCのセキュリティチェック、自宅にいながら会社の電話番号で発信できるIP電話の設置(営業チーム、サポートチーム)なども取り入れています。会社と同等レベルの環境およびセキュリティ保持に努めています。

公式キャラクターをチャットBOTに常駐

テレワークを実施するうえで課題になりがちなのが、従業員とのコミュニケーション不足です。同社ではそれを解決するため、チャットツールを使い、コミュニケーションの向上を図っています。チャットツールには、同社公式キャラクターをBOTとして常駐。出社している社員数やオフィス内の気温、湿度などの情報を教えてくれるため、自然なかたちでオフィスの状況を把握でき、コミュニケーションが生まれやすい仕掛けとなっています。

テレワークを成功させるためには、企業側からのアプローチが大事

テレワーク事例を紹介した企業2社はともに、テレワーク環境を整えるだけではなく、率先して従業員とのコミュニケーションを図る工夫をしていました。すべてを真似することは大変かもしれませんが、社内に導入できそうな内容があれば自社で取り入れてみてはいかがでしょうか。