2011年3月11日に起きた東日本大震災から10年。多くの命を犠牲した東日本大震災の教訓を活かしていくことが大切です。とはいえ当時と現在では、社会情勢の変化により、防災に対する考え方も変わってきています。そこで今回は、テレワーク時代における防災対策について考えていきたいと思います。

東日本大震災で発生した帰宅困難者

東日本大震災で首都圏は、震度5強を観測する大きな揺れにより交通機関が麻痺状態となり、多くの帰宅困難者が発生しました。災害時は安否確認が集中的に行われるため、携帯電話がつながりにくくなることがあります。
帰宅困難者が生じると、本人だけでなく家族や周囲の人を不安にさせてしまうことはもちろんですが、帰宅困難者が路上に出ることで緊急車両の交通の妨げになるおそれもあります。

行き場のない人が集まることで、何らかの犯罪が生じてしまうリスクもあるでしょう。徒歩で自宅に帰るなど、個別行動を取りがちなため、その後に被災しても所在がつかめずに救助が遅れてしまう可能性もあります。

被災者の生死は、72時間内に救助されているか否かで分かれると言われています。従業員を守るためにも、防犯、防災の観点からしても、帰宅困難者が出ない工夫が必要といえます。

企業として考えておきたい、防災対策

これまで国では、企業防災の推進を行ってきました。企業防災とは、企業が果たす役割として、生命の安全確保、二次災害の防止、事業の継続、地域貢献・地域との共生をしつつ、防災活動の推進に努めることです。そのために企業は、災害時に帰宅困難者を受け入れる場所の提供や、平常時から防災訓練や事業所の耐震化などを行っているのです。
テレワークが導入されたことで、企業防災の考え方も進化させる必要性が出てきました。とくに従業員を守るためには、災害時において従業員の居場所の把握は重要となってきます。
そこでテレワーク時代の防災対策として、「従業員の居場所の把握」にスポットをあて、その方法を紹介しましょう。

携帯GPSでの位置情報把握

仕事をスムーズに行うため、企業によっては会社の携帯を従業員に支給しているケースが見られます。なかにはGPS機能などの位置情報が確認できる機能を使い、業務の効率化を図る企業もあります。GPS機能などを使う方法は防災対策としても、有効といえるでしょう。
しかし業務時間外まで監視してしまうのは、プライバシーの侵害として違法になるケースもあります。業務時間内における監視も、やり方によっては問題となってしまう場合もあるため、ルールを守りながらの活用が大切です。

朝一のタスクの共有

その日にやることや、作業場所などを従業員同士で共有しておくと、災害時にどこにいるか分かりやすくなるため、従業員を守ることにつながります。

仕事場所の共有

従業員が場所を移動する際は、チャットツールなどで行き先を従業員同士に知らせておくと、円滑に業務が進みやすいうえ、従業員の安心にもつながるでしょう。

会社以外の仕事ができる環境を用意する

サテライトオフィスやコワーキングスペースの契約、テレワークに特化したマンションの契約など、何かあったとき、社員しいては業務を継続するための拠点を分散的に確保しておくと、災害時の事業継承につながります。

防災意識の啓発

これまで企業が行ってきた防災訓練などができなくなったため、テレワーク時代の防災対策は、個々が防災意識をしっかりと持つことが重要となります。そのためにも企業が率先して、防災意識の啓発を行うことが大切となるのです。
たとえばヤフーは、警備会社に自衛消防隊や災害時の情報収集を依頼し、従業員に在宅時の防災に関するeラーニングを採用しています(なお、ヤフーは防災アプリのサービスも提供している)。
大阪市中央消防署では、訓練の要点を動画にまとめた「教養型防災訓練」を開発しています。動画を活用することで臨場感がもて、個々の防災への啓発につなるでしょう。

東日本大震災では、多くの人々が犠牲になりました。ここで得た教訓は、けして忘れることなくこれからの防災対策に活かさなければなりません。そのためにも、テレワーク時代にあった防災対策を行うことが、従業員を守るうえで企業の重要な責務といえるでしょう。