2020年は、テレワークの普及が進んだ年となりました。
人口過密な東京都では「出勤者数の7割削減」を打ち出し、事業者に対してテレワークの導入を呼び掛けており、今後さらに進むと思われます。
一方で、なかなかテレワーク導入できない企業もあります。

導入できる会社、できない会社の違いは何なのでしょうか。この記事では、統計資料を踏まえて、分析します。

都内企業のテレワーク導入状況は?

東京都が発表した「テレワーク導入率調査(2021年3月5日発表)」(※)では、都内企業のテレワーク導入率は58.7%です。

筆者の肌感覚と比べると、予想以上に進んでいるように見えます。しかし、その運用実態を見てみると、
・テレワーク実施従業員割合:約5割
・テレワーク実施回数 週3日以下:約6割
となっており、導入企業でも、限定的に活用されている印象です。

※調査対象:従業員30名以上の都内企業(2021年2月後半の状況)
※出典:東京都 緊急事態措置期間中の2月後半の調査結果

従業員規模別の導入状況は?

同調査の従業員規模別に目を向けてみますと、
・従業員数300人以上(回答73社):導入予定なし 19.2%
に対して、
・従業員数99人以下(回答249社):導入予定なし 50.2%
と、なっており、小さな会社のテレワーク導入の難しさが浮き彫りになっています。

業種別の導入状況は?

では、業種による違いはどうでしょうか。
人材派遣や転職サービスを提供するパーソルグループのシンクタンク、パーソル総合研究所の調査(※)によると、以下のとおりです。

(テレワーク実施率)
・情報通信業:55.7%
・学術研究、専門・技術サービス業:43.2%
・金融業、保険業:30.2%
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・建設業:15.7%
・運輸業、郵便業:11.3%
・宿泊業、飲食サービス業:11.1%
・医療、介護、福祉:4.3%

※調査対象:全国企業(2020年11月状況)
※出典:パーソル総合研究所 第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査

阻害要因(1)メイン業務がテレワーク化しづらい

これらの統計を踏まえて、テレワーク導入の阻害要因について考えてみます。

業種別で見ると、実施率が圧倒的なのは、やはり情報通信業です。知識も豊富な人材もそろっていることから、テレワーク導入しやすいことが考えられます。
一方、建設、運輸、飲食など、現場で業務に当たることがメインの職場では実施率が低くなっています。テレワークで出来ない業務が多いのも、想像できます。管理本部など事務職(※)だけでも、テレワークに切り替えてはとも思いますが、企業全体で実施しないと効率が悪いことから、なかなか踏み切りにくいのでしょう。
(※パーソル総合研究所の調査結果によれば、管理部門系職種(総務・経理・法務)のテレワーク実施率は、営業職よりも低くなっています。企画職、コンサル職、IT技術職と比べると段違いで、実施割合は半分です)

阻害要因(2)業務区分が流動的な職場環境

従業員規模別で見たときに、少人数の会社の方が、導入率が低いのには色々と要因があります。もちろん、テレワーク整備のために割く人材的余裕がないことは第一でしょう。
さらに、小規模な会社では、業務区分が不明確な場合も多く、対応しづらさに拍車がかかります。
時には他部署の仕事を手伝ったり、属人的でタコツボ化している業務には急な質問が入ったり、イレギュラーが多いことでしょう。そうなるとコミュニケーションが必要となってきます。フェイストゥフェイスであれば何かと意思疏通しやすいのですが、テレワークではやりにくさがあります。

阻害要因(3)現場での意思決定がしづらい組織体制

テレワークの導入は、想像できないことが起きるので、イレギュラーの連続となります。
そんなときに現場レベルで即断して対応していかないことには、業務スピードが落ちてしまいます。
そうなると「出勤した方が早いよ」となってしまうので、テレワークが根付きません。
経営者や管理者が、現場に権限移譲していない場合はもちろん、株主や取引先などステークホルダー(利害関係者)の声が大きな場合もやりづらさがあると思います。

以上、テレワーク導入の阻害要因について考えてみましたが、皆さんの職場は、いかがでしょうか。大なり小なり阻害要因はあると思います。効率的なテレワーク運営を行うためには、必ず組織体制にメスをいれることになります。
難事業ですが、組織体制を見直すチャンスとも言えるでしょう。